SCHOLAR

採択奨学生の動き

日本財団夢の奨学金が本格スタート

2期生 笹川会長と懇談

_DSC7602+

日本財団夢の奨学金は、2016年度のパイロット事業期間を経て4月1日、全国から選ばれた2期生15人を迎え本格始動しました。これに先立ち3月24日、2期生が東京都・赤坂の日本財団ビルを訪れ、笹川陽平会長から認定証を授与されました。奨学生は、自らの夢をはつらつと語り、笹川会長は笑顔で激励しました。

 

夢の奨学金は、事情があって児童養護施設などで育った社会的養護出身者の進学・就職を支援しようと、2016年に日本財団が設けました。学費だけでなく生活費や住居費を給付するという、他の奨学金制度と比べて手厚い支援が特徴です。また、お金の支援に加えて、ソーシャルワーカーが奨学生に伴走し、卒業や就職までの間、様々な相談に対応する態勢も取っています。現場の専門家が、「こんな奨学金があったらいい」と考える要素を聞き取り具体化した内容になっていることから、このような名前がつけられました。

 

初年度となる2016年度は、パイロット事業として中京地区で実施しました。46人の応募の中から11人が選ばれ、1期生として大学などで学んでいます。翌年度以降は本格実施として全国から応募を受け付けることになり、2017年度に向けては119人の中から15人が2期生に選ばれました。

 

2

笹川会長との面会に臨む2期生たち

 

2期生15人は24日、多くが黒いリクルートスーツ姿で日本財団ビルを訪れました。前日にも1期生の活動報告会に出席するため訪れていましたが、翌日のこの日は、いよいよ認定証が授与され、笹川会長とも懇談することになっており、いっそう引き締まった表情で集合しました。

 

笹川会長との面会は懇談から始まりました。冒頭、2期生が、笹川会長に対して自己紹介を行いました。申請した時に高校3年生だった人が多数ですが、中には、すでに進学していたり、進学をあきらめ働いたりしていた人もいます。それぞれが、自分の目標としている職業とそれを目指すきっかけを話し、新年度からどの学校で何を学ぶかを報告しました。

 

3

2期生の自己紹介にコメントする笹川会長

 

15人の夢で多かったのは、看護師や児童養護施設職員です。それ以外はバラエティに富んだものでした。弁護士、パティシエ、研究者、病棟保育士、ソフトウェア開発ベンチャー企業の立ち上げ、大工、日本食の料理人、国連職員、消防士です。笹川会長は、感心した表情で聞き入りました。

 

トップバッターの石岡一幸さんは、「将来は子どもを守る大人になりたい」と話しました。そのために、現在通っている専門学校で様々な資格を取り、保育士となって保育所や児童養護施設の職員として働きたいという希望を持っていることを伝えました。

 

4

笹川会長からエールを送られる石岡さん(左端)

 

石岡さんは、この夢を持った理由として、「自分を育ててくれた大人たちへのあこがれや尊敬、感謝の気持ちがあったから」と話しました。笹川会長から、自身が育った環境を紹介されながらエールを送られた石岡さんは、自分のような育ち方でも立派な大人になれるということを、自分と似た境遇の子どもたちに伝え、希望を与えられる存在になりたい、と抱負を語りました。

 

「僕の夢は弁護士になることです」という時田正晶さんは、大学在学中に司法試験に合格して弁護士になりたい、と力強く目標を語りました。「お尻が痛くなるくらい勉強しなければいけませんね」という笹川会長の笑顔の問いかけに苦笑いしながら、時田さんは「弁護士の仕事は幅が広くいろいろなことができる。人間臭く様々な人と会話ができるので、そうしたことを弁護士になれたらやっていきたい」と話しました。

 

5

夢を語る時田さん

 

製菓専門学校に進学する西原海斗さんは、「製パンや、和菓子、洋菓子の知識を身に付けて、将来は自分の店を出せるよう頑張っていきたい」と話しました。笹川会長は、日本財団でもパティシエを養成していると紹介し、「洋菓子の本場フランスでは、パティシエはほとんど日本人。いい職業を選びましたね」と励ましました。

 

進学先の大学でスポーツ科学を学ぶ予定の伯野海人さんは、「自分の夢は消防士になることですが、もう一つ夢があります。それはボクシングの指導者になることです」と話しました。伯野さんは中学2年生からボクシングを習っていて、高校2年生の時に社会的養護出身の元プロボクサーと出会ったことをきっかけに、二つ目の夢を持つようになったと紹介しました。

 

6

2期生を励ます笹川会長

 

その元プロボクサーは全国の養護施設を回り、ボクシングを通して子どもたちとの関りを持っていて、伯野さんに次のような話をしたそうです。「子どもたちにミットにパンチしてこいと言った時に、笑顔で楽しそうに殴ってくる子もいれば、にらみつけて殴ってくる子もいる。泣きながら殴ってくる子もいる」

 

伯野さんはその時、コミュニケーションが苦手であるために、暴力に走ってしまう子もいると知り、施設で過ごした自分なら少しはそうした子どもたちの気持ちを共有できるかもしれないと考え、消防士とは別にボクシング指導者の夢も追いかけることにした、と紹介しました。笹川会長は、自身にもボクシング選手の知人がいることを話して激励しました。

 

7

笹川会長からの励ましに笑顔を見せる宮川さん(左)

 

最後の順番だった宮川史誉さんは、「私の夢は国連職員」と言い、教育を受けたくても受けられない子どもたちの支援に携わりたい、と話しました。施設で小学生の宿題を見てあげたり、中学生に試験前に勉強を教えたりしていたことから、教育面で支援ができる仕事をしたいと思った、と説明しました。そして、児童養護施設に保護されたことで、きちんと教育を受けられるようになった自らの経験を踏まえ、その恩返しをしたいと考えた、と話しました。

 

笹川会長は、日本は国連に多額のお金を拠出しながら、職員の中に日本人が少ない状況にあることを説明し、国連職員になりたいという宮川さんの夢を応援する約束をしました。

 

8

認定証を授与される白石輝さん(右)

 

最後に、笹川会長が一人ひとりに認定証を手渡しました。笹川会長は、日本財団の奨学金は、奨学生の学業終了と同時に終わるものではない、としたうえで、「皆さんとは一生お付き合いをしていきたいと思っています。社会人になっても、日本財団との絆をもって、何か困ったことがあったら相談をしてほしい」と激励しました。