夢の奨学金3年目スタート
笹川会長が3期生に認定証授与
2018.04.18 (水)
日本財団夢の奨学金は4月1日、3年目がスタートしました。これに先立ち3月30日、止むを得ず欠席となった1人を除く3期生16人が東京都・赤坂の日本財団ビルを訪れ、笹川陽平会長から認定証を授与されました。笹川会長との懇談の時間もあり、奨学生は抱負と夢を熱心に語りました。
夢の奨学金事業は2016年度に始まりました。児童養護施設などで育った社会的養護の出身者の多くが進学や就職の面で困難を抱えていることから、彼らの夢の実現に向けて支援をすることを目的として設けられました。初年度はパイロット事業として中京地区で実施し、応募者46人の中から11人を選出。範囲を全国に拡大し本格実施となった昨年度は119人の応募の中から15人が選ばれました。
3年目となる今年度は、応募者172人の中から17人が選ばれました。3月30日には、このうち16人が、黒いリクルートスーツ姿で日本財団ビルに集合しました。前日にも1、2期生の活動報告会聴講のため訪問していた3期生でしたが、まだ出会って間もないということもあり、それぞれがやや緊張した表情でした。
前日に続いて交流のために再訪問していた1、2期生数人に見送られ、3期生は会場の会議室に入りました。それぞれが着席した後、笹川会長が入室するまでの間、自己紹介での声の大きさや割り当てられた時間を確認したり、認定証の授与に関する説明を受けたりしました。リラックスしている人、硬い表情のままの人、さまざまでした。
笑顔で笹川会長(手前)と話す奨学生たち
笹川会長が到着して、懇談が始まりました。笹川会長の笑顔の登場に、3期生にも笑みが見られました。まずは席順に自己紹介。1、2期生と同様、3期生も多様です。この春、大学や専門学校に進学する高校卒業直後の人もいれば、大学院で専門的な勉強をする人もいます。夢も多岐に渡り、これまでになかったものとして、「短編アニメーション作家」や、「少林寺拳法道場を開く」、「自然保護官」などがありました。
阿部天音さんは、東京藝術大学大学院に進学予定であることを報告。大学の4年間も美術を学んできたと紹介し、「将来は自分が得意とするボールペンで描いた絵を生かした映像作品を手掛ける作家になりたい」と話しました。
山口県の至誠館大学に入学する中原康平さんは、「高校の体育の先生になることが夢」と語りました。スマートフォンの普及などで子どもたちにとって体を動かす機会が減っているという現状を踏まえ、運動の楽しさを伝える教師になりたいと抱負を述べました。
埼玉県立大学保健医療福祉学部の看護学科で学んでいる女子学生は、夢は助産師・看護師になることといい、児童養護施設で過ごした経験から、「ご家庭とお子さんのきずなの懸け橋になりたい」と話しました。
夢を語る奨学生たち
中川咲夏さんは、岡山労災看護専門学校に入学することを報告しました。高校では、日本赤十字社の学校教育の中での取り組みである「青少年赤十字」などで活動してきたといい、「ニーズを考えた支援を行える人になりたい」と述べました。
青森県立保健大学に進む柏木千里さんは、社会福祉士として児童養護施設に就職することを目標にしていると報告しました。自身の生い立ちを踏まえ、「施設にいることのマイナスを変えたい」と話しました。
小山田翔真さんは、静岡県の常葉大学社会環境学部に進学を予定。「自然保護官を目指します」と宣言し、国家公務員でもあるので試験勉強を頑張りたいと話しました。
HAL名古屋専門学校に進学する河原崎光希さんは、システムエンジニアになる夢を語りました。「社会的養護の子のサポートがしたい。専門学校で学んだ技術を福祉に生かしたい」と抱負を述べました。
講話する笹川会長
笹川会長はそれぞれの発言に頷きながら耳を傾け、その都度、言葉をかけました。例えば、看護師を志望する奨学生に対しては、日本財団が、看護師による在宅看護センターの起業を後押ししていると紹介。また、「高校の物理の先生になりたい」という奨学生との間では、笹川会長が「物理はさっぱりわからなかった」と話したのに対し、奨学生が「物理を好きになってもらえるような先生になりたい」と返す場面もありました。
全員の自己紹介が終わった後、笹川会長の講話がありました。笹川会長はまず、「夢を持つことは素晴らしい」と言い、堂々と夢を語った奨学生をたたえました。全員が社会的養護出身であることについても触れ、「人が経験したことのない経験をしたということ。プラスになることはあっても、マイナスになることはない」と励ましました。
また、笹川会長は80歳になる現在でも頻繁に海外に赴き職務をこなしていることを紹介し、「精神的にはあふれる情熱を持たないと。あなた方には可能性がある」と話しました。人生は一本道ではなく夢も途中で変わることがあること、「上り坂、下り坂、“ま坂”(まさか!)もある」ことなどを説き、常に情熱を持っていれば進んでいけると伝えました。
講話の終わりに笹川会長は、「長い人生なのであわてることはない。滅入ったな、と思ったら僕の顔を思い出して。奨学生もここにはたくさんいる。私たちは単に経済状況を支えているわけではありません。みんなが集まれる場所として日本財団は皆さん方の親にもなります」などと激励し、3期生は笑顔で応えていました。
最後に笹川会長が一人ひとりに認定証を手渡し、全員で記念撮影をして終了となりました。
認定証を授与され笑顔の奨学生