SCHOLAR

採択奨学生の動き

2023年度 第2回交流会 ~沖縄にて初の奨学生交流会を開催 アクティブで有意義なイベントに~

2023年11月10日~12日 於 沖縄

 

『日本財団 夢の奨学金』では、奨学金を受けながら大学や専門学校で学んでいる学生同士の交流会を開催しています。新型コロナウイルス感染症対策のためのリモート開催を余儀なくされていた時期もありましたが、今回は対面で久々の地方開催、宿泊を兼ねたビッグイベントとなりました。在学期間に思うように交流会を開催できなかった奨学生たちが「泊りがけで奨学生同士の交流を深めたい」と企画提案を行った結果、念願の沖縄での開催が実現しました。2023年11月10~12日の3日間、奨学生9名、およびソーシャルワーカー、日本財団職員が集い、沖縄の空のもと、アクティブで有意義な時間を共にしながら、親交を深めました。
 
1日目:那覇空港から出発し、『道の駅 許田』で全員合流
 
普段は全国各地で学生生活を送っている奨学生たち。初日の11月10日、東北や関東、関西、そして北海道の奨学生が沖縄の那覇空港に集合しました。参加者は複数台の車に分乗し、まず目指したのは名護市にある『道の駅 許田』です。
 
ここには地域の物産やお土産物売り場があり、フードコートや売店では、もずくの天ぷらやジェラード、琉球銘菓などの沖縄ならではの美味しいものが並んでいました。ここで、北海道から遅れて到着した奨学生と合流して全員集合。久しぶりに会う仲間たちと挨拶を交わしながら、道の駅を楽しみました。建物の屋上は展望台になっており、海も臨める素晴らしい見晴らしです。夕刻の沖縄の空と海を眺めながら、「いよいよ交流会がスタートする!」という期待に胸が高鳴りました。
 
一行が向かったのは初日の宿となる国頭郡本部町にあるマリンピアザオキナワです。修学旅行などでも利用される広々としたオーシャンビューの宿泊施設。周辺には水族館や観光地もある好立地です。夕刻の到着でしたので、それぞれの部屋に荷物を置いてから、夕食会場に集合しました。
 
ここではテーブルを並べて一堂に会し、和気あいあいとバイキングを楽しみました。まずは奨学生もソーシャルワーカーも職員も含めて自己紹介。現在学んでいること、今回の交流会を楽しみにしてきたことなど、思い思いに伝えていただきました。沖縄には初めて来たという奨学生が多く、「空港に着いただけでもうれしくて、景色を目に焼き付けたいと思って散策しました」という奨学生も。夕食を楽しみながら、隣の席や向かい合った仲間と近況報告などで盛り上がりました。明日予定されているさまざまなアクティビティの打ち合わせの後、奨学生たちは卓球で大いに盛り上がり、一日目の夜は更けていきました。
 
2日目午前:イルカと触れ合うアクティビティに感動!
 
2日目、雨が心配な日になりましたが、今日は多様なイベントが予定されており、朝食会場で「おはよう」「イルカ楽しみですね!」挨拶を交わす奨学生たち。初日の夜は同じ部屋の仲間と語り合い、皆さんの距離もグッと近くなった様子です。
 

美ら海水族館

 
午前中は3つのグループに分かれて、美ら海水族館の見学とイルカと触れ合うアクティビティを体験します。美ら海水族館は沖縄観光のメインスポットの一つ。見どころは、太陽の光が水槽に降り注ぐ『サンゴの海』、世界最大の魚ジンベエザメ、大きなマンタなどが泳ぐ巨大水槽『黒潮の海』、そして沖縄の深海を再現した『深層の海』などなど。沖縄の海をそのままに表現した展示が魅力です。「私は午前中、ずっと水族館で過ごしたいです!」との希望で、ゆっくりたっぷり水族館を見学した奨学生もいました。
 
一方、早めに水族館を出発した先発チームは、さまざまな海のアクティビティ楽しめる「もとぶ元気村」へ。イルカと泳ぐ『ドルフィンエンカウンター(スイムプラス)』に挑戦するのは2名の奨学生です。入念なレクチャーを受けてから、イルカの背びれにつかまり、一緒に泳ぐことができます。泳ぎはないけれど水の装備をしてイルカと触れ合う『ドルフィンエンカウンター』には6名の奨学生が参加しました。他の奨学生やスタッフは、少し離れたところから、アクティビティの様子を見守っていました。
 
もとぶ元気村で海風に吹かれながらのアクティビティを終えてから、昼食は本部町の海岸沿いにあるレストラン『ちゃんやー』に向かいました。沖縄らしいフクギ並木を通り抜けると、たどり着いたのは赤い屋根の沖縄古民家。実際の沖縄の住まいを改装して作られたという風情溢れる建物です。食事メニューもアグー豚のしゃぶしゃぶ、海ぶどうやアセロラドリンクなど、沖縄の幸がふんだんに用意されていました。
 
「今日はイルカとの記念すべき出会いに、乾杯!」(ノンアルコールです)と、昼食の席でも先ほどのイルカ体験の興奮冷めやらずという感じ。まずイルカと泳いだ2人に「どうでしたか?」「乗っている時間が短い気がしたけど…?」と質問が相次ぎました。
 
イルカに乗った奨学生は、「イルカを触ると、しっかり弾力があり、つるつるとしたお肌。ちょっと湿った茄子のような感触でした。イルカに乗ったら、そのまま引っ張って連れて行ってくれた、という感覚です。イルカの力強さに感激しました。見ている方は、泳いだ距離が短いと思われるかもしれませんが、イルカの背に乗っていると、その一瞬が長く感じるのです、ぐいぐい遠くまで、竜宮城まで連れて行ってくれそうな感覚になりました。距離は10mでも感動は100㎞でした!」とリアルに語ってくれました。
 
イルカとの触れ合いを楽しんだチームも、「人間の3歳児くらいの知能があると説明を受けましたが、接してみて、人の表情や仕草をよく見ているのがよくわかりました。イルカの賢さを実感しました」「触れ合うだけでも楽しかったけれど、次に機会があれば、やっぱり一緒に泳ぎたいと思いました」と感想を教えてくれました。「イルカの方から僕に近づいてきてくれました!選ばれたのかも。でもちょっと愛が重かった」とユーモアあふれる感想もあり、皆さん笑いに包まれました。
 
水族館で過ごした奨学生は「美ら海の水槽には、その海水に含まれる環境DNAから魚類を検出する技術あるとか、マンタの赤ちゃんは人間より大きいとか、興味深かったです。青いマンタの美しさが印象的でした」と話してくれました。
 
2日目午後:子ども第三の居場所『子ども自然図書館』を見学
 

閉校となった旧本部町立崎本部小学校の校舎を利用した施設『子ども自然図書館』

 
 

食事を終えてからは、福祉施設の見学に向かいました。今回の交流会におけるメインの企画です。見学するのは、本部町の社会福祉法人アタイハートネットワークが運営する『子どもの自然図書館』です。ここは令和2年4月に閉校となった旧本部町立崎本部小学校の校舎を利用した施設で、周辺の自然豊かな環境も取り込み、図書館、牧場、工房、農場、商店、そして2022年に「子ども第三の居場所」として建てられた『子どもの家』から構成されています。
 

「子ども第三の居場所」本部拠点である『子どもの家』

 

早速お邪魔させていただいたのが子どもの家。こちらは日本財団が助成する「子ども第三の居場所」の開設及び運営事業助成金により完成した施設です。子どもたちが集まる場所であり、子どもの家を含む『子ども自然図書館』全体の活動拠点にもなっています。ここには放課後週に5日間、未就学児から高校生の子どもたちが通ってきます。
 
全体のテーマは『土壌から食卓までの人と人とのつながり』。周辺の自然を利用して、鶏を育てて卵を収穫したり、近くの小川で魚やエビを捕ったり、畑で野菜を育てたりして収穫し、自然の食物や生き物の命の尊さを学びます。収穫したものを自ら調理して食べる食育を通して、感謝の気持ちも学びます。
 
職員さんは「この地域では不登校のお子さんが増えている、経済的に困っているシングルマザーの家庭が増えている、といった問題があります。何らかの理由で学校に登校していないお子さんは、午前から子どもの家で過ごしています。学習に苦手意識を持っている場合には、何のために学ぶのかということを、生活や自然体験の中で感じてもらうことを大切にしています。例えば、卵を収穫してパックに10個ずつ詰め作業を通して“数える”ということの必要性に気づく。“勉強は役に立つな、大事だな”という気持ちが湧いて、学習に向かえるようにサポートしているのです」と、教えてくれました。
 
また、子どもの居場所は地域活性化にもつながっていました。地域には一人暮らしの高齢者も多く、「小学校が閉校になって、子どもの声が聞こえなくなってさみしい」という声が聞かれていました。こうした中、「子ども第三の居場所」が誕生したことで「子どもの声が戻ってきてうれしい」と喜ばれています。運動場は高齢者の健康スポーツ会場にもなっており、「子どもの第三の居場所」でありながら、地域の老若男女が集えるコミュニティスペースになっています。
 

『子どもの家』の隣に切り開かれた広大な畑

 

「子ども第三の居場所」本部拠点の活動について教えて頂きました

 

エビやカニが捕れるという小川や周辺の農地にも案内していただき、せせらぎの音を聞きながら、奨学生たちは興味津々で職員の方の説明に耳を傾けていました。少し雨が強くなってきたことから、子どもの家の職員の皆さんにお礼のご挨拶をして見学を終えました。
 
一行は2日目の宿となる那覇市のホテルリソルトリニティ那覇へ。夕食は那覇にある『味と踊りの竜宮城 うらしま』で、伝統的な琉球舞踊を鑑賞しながら郷土料理をいただけるという、沖縄ならではのお店です。祝宴の踊り、大漁を祝う踊り、愛しい人に会いに行く踊り、ユーモアあふれる踊りなど、正統派の琉球舞踊を楽しみました。奨学生たち全員でボックス席を囲み、ふだんなかなか見られない舞踊を見ながら歓談し、楽しいひと時を過ごしました。
 
3日目:「この機会に感謝!」おきなわワールドで懇談
 
3日目となる最終日は、沖縄の文化や見どころが凝縮されたテーマパーク『おきなわワールド』へ。前日に買った水族館のTシャツをお揃いで着用している奨学生たち。まずは大迫力のエイサーのショーを鑑賞しました。昨晩の伝統的な琉球舞踊から、また時代を経て沖縄の文化となったエイサーのステージです。「とても力強くて楽しいステージでした」「パワーをもらえた!」と、大感動の様子。その後はフリータイムということで、日本国内でも最大級の鍾乳洞『玉泉洞』を探検したり、ハブの研究施設から生まれた『ハブ博物公園』で勇気のある人はヘビと戯れたりなど、思い思いにテーマパークを体験しました。
 

日本国内でも最大級の鍾乳洞『玉泉洞』探検の様子

 
昼食の後は、おきなわワールドの中にある古民家の喫茶店『茶屋三段花』で、お茶やジュースを飲みながら、この3日間の締めとなる懇談が行われました。5期生の皆さんは今年度で卒業という人が多く、一足早く今後の進路についても報告してくれました。第一志望の結果待ちの人を含めて、ほとんどの奨学生は内定を得て進む道を決めています。児童相談所勤務を見据えた公務員、学校講師、建設会社など、さまざまな道に進みます。3日間のイベントを無事に終えて、すっかり打ち解けた仲間同士。どのような思いで就活をしてきたか、どのようなことを成していきたいか、一人ひとりじっくりと語ってくれました。また、在学中の奨学生も現在の学業のこと、生活のこと、今回の交流会で感じたことなどを話してくれました。
 

振り返りの様子

 
5期生の奨学生は「念願の宿泊を兼ねての交流会が実現して夢のようです。私たちは入学してから新型コロナ感染症の流行となり、オンラインでの交流会が続いていたので、リアルに会って話す機会はとても貴重でした。できれは同じ5期生で昨年卒業した仲間も一緒に来たかった……」と、卒業した仲間へ思いを寄せる姿もありました。
 
「多くの人と密度の濃い時間を過ごすことができて、普段話せないこともお互いに話せて、ほんとうに楽しかったです」「初めての沖縄、初めてのアクティビティ体験、盛りだくさんでした。ありがとうございました」「楽しかったのはもちろん、さまざまな学びや発見があり、充実した交流会でした。多くの人々のご協力に感謝して、これからも頑張っていきたいです」など、皆さん口々に充実感と感謝の思いを伝えてくれました。
 
奨学生の皆さんとソーシャルワーカー、事務局、日本財団の職員も含めて、忘れられない交流会となりました。次回また報告会でお会いしましょう!