2018年度第1回交流会
1、2、3期生が初めてそろった親睦の場~ゲームでアイスブレイク
2018.06.06 (水)
「日本財団夢の奨学金」は、3年目がスタートしました。奨学生も1期生から3期生まで増えて、数十人規模のコミュニティになっています。今年度も引き続き、彼らが集う機会が設けられ、その第1回の交流会が5月26日、27日の両日、東京都・赤坂の日本財団ビルで開かれました。学校の行事などで来られなかった人を除く21人が全国から出席し、仲間と親睦を深めました。
交流会は初年度から行っていますが、奨学金の募集対象が全国に拡大された昨年度から、場所を限定せず、奨学生のいるエリアで年に3回開くことになりました。企画も昨年度に事務局から奨学生に引き継がれ、今年度も有志がその準備や運営を担当します。
初日の26日は、午後1時に財団ビルに集合。前回の活動報告会や認定証授与には、黒いリクルートスーツなど正装してやってきていた3期生も、初めて普段着姿で訪問。進学して1カ月余り、髪形や雰囲気が新たになった学生もいて、1、2期生を含む仲間から笑顔で迎えられていました。
職員から事務手続きの説明を受ける奨学生たち
交流会は、事務局の職員と奨学生が一堂に会し、直接話す貴重な機会にもなっています。そのため、冒頭は事務に関する連絡がありました。各種手続きの注意事項伝達のほか、異動に伴い交代する担当職員による挨拶もありました。
また、新年度の1回目ということで、「なぜ交流会を行うのか」を事務局が改めて説明しました。中京地区限定のパイロット事業だった1年目は、社会的養護出身者同士が、進学先の学校の友人らには共有しにくい事情も気兼ねなく語れ、素になれる場所を作ろうと事務局が企画。現地NPOの協力で古民家事務所のスペースを借り毎回、昼食を共にしながら近況報告していました。
2年目である昨年度。本格スタートに伴い対象地区が全国に広がって、奨学生の人数も増えたこともあり、交流会の場所は中京地区限定ではなくなりました。企画も奨学生の中で発足した企画チームが担って、親睦を深めるだけでなく、社会的養護についての議論などもするようになりました。
事務局の職員は「この時間を使って、一人でも二人でも気の合う人を見つけていただけたら。それがきっと皆さんの生活の力になると思います」と話しました。そして、「財団も、皆さんとの関係性を作っていきたいと考えています。お金だけの付き合いにしたくないというのが、この奨学金。10年後、20年後も交流できる仲間として、お互いをよく知ってほしいし、私たちも皆さんを知りたいです。夢の奨学金チームが一つの単位となって、一つの居場所、つながりを作っていきたいと思います」と呼びかけました。
説明が終わると、交流会のスタートです。司会進行も運営担当である奨学生にバトンタッチされました。今回は、3期生を迎えたばかりなので、新しい仲間のことを知ることが主な目的です。そこで、2つのアイスブレイクゲームをして、その後に近況報告を一人ずつ行うことにしました。
他己紹介で名前を紹介しあう奨学生たち
アイスブレイクゲームの一つ目は、「他己紹介」と呼ばれる紹介ゲームです。まず二人一組のグループを作り、名前や学んでいる学校のことなどを、お互いに伝えます。次に、別のグループと組んで4人となり、自分が聞き取った相手の紹介を、新たな2人に対して行います。それから順に人数を増やします。
進行役の奨学生が、まずはお手本を見せました。「2期生の宮川さんと言います。好きなものは、サブウェイのイモです。大学がたまたま敷地、一緒で、たまに会ったりします、みたいな感じで、お願いします」。1期生のペアが加わってみんなの前で他己紹介を披露した後、全員で開始しました。
それぞれが首に提げた名前カードを見せながら、相手に自分の名前を紹介するところから始めました。他己紹介の段階になると、中には恥ずかしそうに控えめに紹介する奨学生もいましたが、次第に会場に響く声や笑い声も大きくなり、制限時間までおしゃべりが続いていました。
二つ目のゲームは共通点探しゲームです。4人ずつグループに分かれて、互いの共通点を見つけ出し、一番多くそれを挙げたチームが勝ちとなります。共通点を見つけるためには、「私は、こうだけど、みんなは?」と自分のことを伝えたり、相手に尋ねたりする必要があります。他己紹介ゲームでおしゃべりに火が付いていた奨学生たちは、ますます話し込み始めました。
共通点探しゲームの結果
あるチームでは、「私、施設。みんなは? 施設?里親?」などと、ポンポンと共通点項目を挙げて、全員が同じだとわかると歓声を上げてその項目を書き出して行っていました。アイディアが尽きてくると、「最寄り駅までの距離どう? あーだめだ」など、頭をひねる姿も多くみられましたが、2ラウンド中、20項目を挙げるチームもありました。
また、人数調整のため、事務局職員も参加。職員が挙げる共通点がことごとく不採用になった場面では、職員とすでに気の置けない間柄になっている1、2期生から「みんなの足を引っ張っている」と笑顔でツッコミも入り、さらに大きな笑い声が起きていました。
職員も加わったチームの共通点探しの様子
すっかり場が和んだところで、それぞれの近況報告です。1、2期生にとっては、活動報告会からまだ2カ月しか経過していませんが、新年度になって生活が変化したり、交流会内の近況報告であったりするため、全員がざっくばらんに日々の生活や思いを発表しました。
比較的、高学年が多い1期生からは、就職活動や、「買春男性の心理」といった研究テーマ、小学校でのボランティアエピソード、それに専攻が高じて作家活動が本格化したことなどについて報告されました。
2期生は、引き続き頑張っている学業のことや、伴走してくれているソーシャルワーカーとの交流、サークル活動で海外に行く予定などが話題に。3期生は、進学後の生活の変化や、発見を語る人が多くいました。
「このお店に作品を置いてもらえるようになりました」と、カフェのフライヤーを紹介する奨学生
例えば、英語を勉強する学生が「焼き肉屋で通訳のバイトを始めた」と話すと、珍しさも相まってどよめきが起きました。また、体育教諭志望で母校のバレー部を再訪したという奨学生が、「生徒の時とはまた違った視点で恩師の姿を見ることができ、あらためてこういう先生になりたいと思った」などと報告した時には、全員が静かに聞き入っていました。
最後に次の交流会の開催エリアを相談し、1日目を終了しました。全員の移動の便を考えて、次回も再び東京です。8月13、14日を予定しています。