SCHOLAR

採択奨学生の動き

2017年度第1回交流会

社会的養護の3テーマで議論 奨学生が自ら企画

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「日本財団夢の奨学金」の新旧奨学生が全国から集う交流会。その2017年度第1回が5月27、28日、東京都・赤坂の日本財団ビルで開かれ、学校などの行事でやむを得ず来られなかった人を除く、18人が出席しました。1、2期生が親睦を図るのと同時に、奨学生の中で発足した企画グループがグループディスカッションを提案し、社会的養護の経験を生かして3つのテーマで議論を行いました。

 

交流会は昨年度、中京地区でのパイロット事業だったことから、名古屋市で開催していましたが、今年度は対象を全国に広げて本格スタートしたことを受けて、第1回を日本財団ビルで行うことになりました。

 

場所に加えて、運営方法も新たになりました。昨年度は、日本財団の担当者が同時開催していた勉強会も含めて企画していましたが、今年度は企画の主体を奨学生に移し、奨学生自身が交流会の内容を計画していくことになりました。

 

事前に発足した企画グループには、1、2期生合わせて6人がメンバーになり、今回の交流会で何をするのかを検討しました。その結果、ディスカッションという案が出て、交流会の1日目に提案、他の奨学生も賛成しました。

 

ディスカッションは、3班に分かれた参加者が、それぞれで異なるテーマで話し合い、班の代表者が結果を全員に報告することにしました。テーマは「社会的養護者のあったらよかった、こんなこと 〰不満・願い〰」、「施設と児相(児童相談所)と子どもをつなぐもう一つのポスト」、「施設格差について」の3つです。

 

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意見が次々に書き出されていきました

 

グループディスカッションの本番となった2日目は、午前中を使って熱心な議論をしました。ポストイットに意見を書いて互いに見せ合い、関連する意見をグループ分けしながらホワイトボードに貼っていく作業です。奨学生たちは、互いにファーストネームで呼び合うなど打ち解けた様子で、同じ社会的養護出身者として、本音を語り合いました。

 

「社会的養護者のあったらよかった、こんなこと 〰不満・願い〰」は、1班が話し合いました。「テーマの範囲が広過ぎる」というため息交じりの発言が飛び出すほど、多くの意見が出ました。ポストイットがホワイトボードを埋め尽くし、全体の発表に向けてどうまとめるかメンバー一同、頭を抱える場面もありましたが、「正しい性教育がなされていないので、あったらいい」など多様な意見が次々に飛び出し、活発な議論が続きました。

 

「施設と児相と子どもをつなぐもう一つのポスト」は、2班が意見を出し合いました。このテーマは、児童相談所が現状では十分に役割を果たせていないのではないか、という問題意識から設定されました。問題意識は共通にあるものの、“それをつなぐもう一つのポスト”を議論するにあたっては、経験者ならではの様々な意見が出ました。例えば、児童養護施設で暮らした経験のあるメンバーは、特に年少の子が訴えることの多い「親の元に帰りたい」という願いに対して、その“ポスト”での判断基準はどうなるのかといった指摘を出しました。

 

「施設格差について」は、3班が議論しました。メンバーは施設での経験を語り、環境の違いを発見すると驚きの表情で質問し合いました。例えば、あるメンバーは「うちの施設ではいじめはなかった」と話し、全員をうならせました。「施設だといじめは絶対にある」「気づかなかっただけじゃないの」と言った反論が出ましたが、発言した本人は、施設で実施されていた「ポイント制」という生活ルールについて説明し、これのおかげでいじめは起きなかったと説明していました。

 

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班の中で意見を出し合う奨学生

 

こうしたディスカッションを約2時間続けた後、各班の代表が発表を行いました。

 

1班は、出された意見を信頼関係やプライバシーの問題といったカテゴリーに分けて紹介しました。「特に言いたいこと」として、施設では社会的な習慣・常識を身に付けるのが難しい点を挙げました。また、社会的養護出身者の多くが賃貸契約などで困難を抱えていることから、専用の身分証明書があったらいいという意見が出たことを報告しました。

 

2班は、社会的養護の子どもはサービスの利用者であるにもかかわらず、施設や児相の自己満足の支援がなされているという問題提起をしました。例えば進学希望者に対して、経済的理由からそれをあきらめ就職するよう諭すといった事例です。こうした事態を解決するために、“もう一つのポスト”の必要性を主張して、施設や児相を監視し、問題点を指摘していくことが重要ではないかと発表しました。

 

 

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発表に真剣に耳を傾ける奨学生たち

 

3班は、さまざまな格差がある中で、一番着目したのは進学についてだったと報告しました。施設によって入ってくる情報量が異なり、これが原因で、将来の夢も狭まってくると指摘しました。奨学金情報も施設側が出入りを止めてしまったら、子どもはどうすることもできないと訴えたうえで、自分たちができることとして、メディアでの実情の発信を挙げました。その一環として、夢の奨学金の奨学生がツイッターで発信し、進学を夢見る子どもたちに奨学金について知らせていく活動を提案しました。

 

また、この議論をきっかけにした前向きなコメントも目立ちました。「知ることは大事。関連する本も読んでみたいと思った」「ディスカッションの成果を何か形として残せたらと思う」「(全国の社会的養護の子が、問題を改善したいと思って話し合えば)状況は変わっていくのではないかなと思った」などの発言がありました。

 

最後に、企画グループに新たに加わりたいと5人が手を挙げ、交流会は終了しました。次回は8月14、15日、大阪府で開催の予定です。