SCHOLAR

採択奨学生の動き

夢の奨学金スタート

奨学生10人 財団訪問
会長と懇談も

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今年度の奨学生と笹川会長(中央)

 

事情があって児童養護施設などで育った社会的養護出身者の進学・就職を支援しようと、日本財団は今年度、彼らを対象とした「夢の奨学金」をスタートさせました。それに先立ち3月28日、奨学生10人が東京都・赤坂の日本財団ビルを訪問。奨学生認定証の授与式に出席し笹川陽平会長と懇談したほか、奨学生間の親睦を深めました。

 

この日は、今年度の奨学生に選ばれた11人のうち10人が出席しました。黒を基調としたいわゆるリクルート姿での財団ビル訪問となり、緊張した表情も見られましたが、同世代の奨学生と集まる機会とあって、事務手続きの合間に交わされるおしゃべりも盛り上がっていました。

 

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笹川会長(左)から証書を受け取る奨学生

 

授与式では、笹川会長が一人ひとりに証書を手渡しました。これを前に懇談の時間もあり、奨学生が笹川会長に将来の目標や抱負を順番に語りました。警察官、中学の社会科教諭、インテリアコーディネーター、美容部員、と将来の夢はさまざまでしたが、全員がそろって、その夢を持つに至った経緯や、同じ警察官でもどんな警察官になりたいかといったことを具体的に、飾らない自分の言葉で発表しました。

 

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奨学生の三者三様の夢が語られた懇談会

 

笹川会長は、奨学生の明るい表情に笑顔を見せ、「皆さんは具体的に将来の人生設計ができている。これはすごいことです」と評価。母親と二人暮らしだった自身の生い立ちにも触れながら、「皆さんはつらい時期を経験し、孤独にさいなまれたこともあったと思いますが、それを乗り越えてきた。苦労の数が多かったほど強く、魅力的な人になれます」と激励しました。そして、「日本財団は皆さんにお金を出すだけではありません。共に生きていく親戚・兄弟のようなものです。ぜひ我々をパートナーとして認めて頂き、人間的なお付き合いをさせて頂けたらと思います」と締めくくりました。

 

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笑顔で奨学生を激励する笹川会長

 

今回の訪問について、奨学生からは、「頑張らなければという思いを新たにした」「会長との懇談は緊張したけれど、よい機会になった」などの感想が聞かれました。ソーシャルワーカーを務める荒井和樹さんは「今回の訪問だけでも、それぞれ個性があることが分かりました。書類の扱いなどにも得手不得手があるので、これからコミュニケーションをうまくとって、その凸凹を埋めていきたいです」と抱負を話しました。

 

また、奨学生募集の窓口を担ったNPO法人こどもサポートネットあいちの長谷川眞人理事長は、笹川会長が懇談の中で「目標は途中で変わってもいい」と話したことを挙げ、「奨学生にとっては、申請時の目標を達成しなければというプレッシャーが大きいですが、会長の言葉で、仮にその目標が駄目だったら挫折ではなく次の目標をもって進めばいいんだ、と心強くなったと思います」と話していました。

 

夢の奨学金」は、学費だけでなく生活費、住居費を、貸付ではなく給付する新しい奨学金制度。お金の支援に加えて、ソーシャルワーカーが奨学生に伴走し、卒業や就職までの間、随時奨学生の相談に対応します。現場の専門家が、「こんな奨学金があったらいい」と考える要素を聞き取り具体化した内容になっていることから、この名前がついています。初年度となる2016年度は、パイロットプロジェクトとして中京地区で実施し、17年度以降全国へ拡大する予定です。

 

「日本財団ブログ ソーシャルイノベーション探訪」より転載